東洋大学 経営学部 マーケティング学科 教授
専門分野は、経営学、マーケティング。商学修士。東京国際大学教授を経て、2008年から現職。『電子モール・ロイヤルティに関する実証的研究―電子モールとショップの品質とロイヤルティ―』で、2015年日本ダイレクトマーケティング学会奨励賞受賞。
キャラクターの使い方は、マーケティングの目的によって変わる
画像:経営学部マーケティング学科・長島広太教授
―テレビやスマホアプリだけでなく、街中でも、キャラクターを見かけない日はありません。キャラクターを起用して物を売る「キャラクターマーケティング」には、どのような手法があるのでしょうか?
「キャラクターマーケティングは、大きく分けて9つの種類があると私は考えています。
①キャラクターそのものを売るコンテンツビジネス …アニメ『ONE PIECE』のルフィ、『ポケットモンスター』のピカチュウ など
②企業のブランド構築としてキャラクターを作り、商品を売る …ENEOSのエネゴリくん、家庭教師のトライさん など
③商品にキャラクターをつけて、キャラクターグッズとして売る …ハローキティ、リラックマ など
④キャラクターの利用権利を他社に売るライセンスビジネス …ご当地キティ など
⑤キャラクターのイラストがついたパッケージで商品を売る …ディズニーキャラクターのついたペットボトル飲料やティッシュペーパー など
⑥キャラクターで地域おこし …熊本県のPRキャラクター「くまモン」 など
⑦消費者がキャラクターを育て、それを利用して商品を売る …共創マーケティング、ねこあつめ など
⑧すでに存在するものをキャラクターにする …擬人化、イケメン化 など
⑨AIを利用した接客において、キャラクターを設定して話しかけてもらう
マーケティングの目的によって、キャラクターの特徴や運用方法が変わってくるんです。」
―思ったよりもたくさんの方法があるのですね……!中でも、どのような使い方をすることが多いのでしょうか?
「②や⑤は、実際に購入したことのある方も多いのではないでしょうか。例えば、②の企業キャラクターの場合は、キャラクターを育てていくことが企業のブランド構築にもつながります。企業の特徴や個性をしっかりと発信できるキャラクターだと、なお良いですね。
また、今までは60代の方の購入率が高かった商品を、20代くらいの若い世代にも売りたいと考えた場合、⑤の手法を取り、20代に人気のあるキャラクターを起用することで目標の顧客層にターゲティングするのです。」
―商品の顧客層ターゲティングにも、キャラクターが活用できるのですね。
マーケティングは非価格競争!顧客の気持ちを動かす鍵は「キャラクター」にある
―キャラクターマーケティングを取り入れることによるメリットとは、どのような点にあるのでしょうか?「マーケティングというのは、基本的に非価格競争です。現代は『コモディティ化(市場参入時に高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること)』が進み、どこのメーカーのものを買っても高品質で、クオリティの差はあまりありません。この場合、『顧客はなぜその商品を買うのか』という点に注目する必要があります。 その中の一つが『認知度』です。知っているキャラクターや可愛らしいキャラクターが商品についていれば、それだけで顧客の目を引きます。ティッシュなどの生活用品や、ペットボトル飲料、お菓子なんかでよく見かけますね。種類ごとに別々のキャラクターがついていれば、集めたくなる心理も働くでしょう。」
―たしかに、好きなキャラクターがついているとそれだけで買いたくなりますね。SNSなどにアップされているのを見かけることもあります。
「それもメリットの1つですね。商品にキャラクターを起用することによって、『それ可愛いね、どこで買ったの?』というような、顧客同士のコミュニケーションが発生します。
最近はTwitterやInstagramなどのSNSを使っている方も多いので、そこから商品が拡散されるということもあります。画像で拡散されるようになったため、キャラクターを用いる効果はより強くなってきていると思います。パッケージのデザインが売り上げアップの鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。」
―SNSといえば、最近では「中の人」といって、企業のTwitterアカウントをキャラクター化しているものも多く見受けられますね。
「Twitterをこのようにキャラクター化して運用するというのも、非常に面白い手法ですね。140字という短い文章の世界だからこそ、個々の発信するアイデンティティがよりユーザーに伝わりやすくなります。効率良くブランドの特徴を伝えるためには効果的ですね。」
ご長寿キャラクターは、企業の信用の証
―昔からいるキャラクターで、今でもマーケティングに起用されているキャラクターにはどのようなものがあるのでしょうか。「昔からの企業キャラクターとして代表的なのは、『キユーピーちゃん』や足袋の会社『福助』などですね。キユーピーちゃんは1922年からキユーピー株式会社のキャラクターとして商標登録されていますし、福助も古くから福助株式会社の顔として活躍しています。」
画像:キユーピー3分クッキングの公式Twitterより★☆祝55周年☆★1963年1月21日に放送が開始された「キユーピー3分クッキング」!今日で55歳の誕生日を迎えました♪皆様いつも有難うございます。明日から木曜まで特別企画をお送りします。「視聴者が選ぶ人気レシピ」を紹介https://t.co/OxMd9JbEtVプレゼント企画も! #3分クッキング #日テレ #3pun55 pic.twitter.com/FXGPL1W0PZ
— 【公式】3分クッキング(日本テレビ) (@3puncooking_ntv) 2018年1月21日
画像:福助株式会社の公式Twitterより\ #ツインテールの日 /
— 福助株式会社 (@fukuske) 2018年2月1日
男性は本日、心惹かれる女性に2本のゴムを渡しましょう。女性は、もし彼の気持ちを受け止める心があるのならツインテールで応えましょう。
な日とのこと…!(なんか凄い)
そんな今日は大人気(?)だった福助さんの靴下ツインテールを置いておきますね。 pic.twitter.com/Hwes1wPWUf
このように古くから愛されている企業キャラクターは、キャラクターを見ただけでその企業の商品だと認識されます。」
―売り場だけでなく、様々な場所で見かけますね。このような企業キャラクターは、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
「企業キャラクターは、企業の信用の証にもなります。知っている企業のキャラクターが描かれていると『あの会社の商品なら安心感があるな』と思いますよね。購買するかしないかが左右されるくらい、キャラクターの影響って大きいんです。 キャラクターを上手に育て、適切に使い続けることで、企業の信用を高めることもできるのです。」
キャラクターと顧客が手を取り合う「共創マーケティング」
―これからの時代、キャラクターマーケティングはどのように変化していくのでしょうか。
「今後、コモディティ化はどんどん進んでいきます。商品によって特筆すべき差が見られない状況になった時に、人気を高める手段の一つとして、キャラクターは無くならないでしょう。ただ、既存のキャラクターは使いすぎると飽きられてしまう恐れがありますので、自社でキャラクターを作り、育てていくというのも良いですね。
もう一つ注目したいのが、『共創マーケティング』。消費者自身が名前をつけたりして育てたキャラクターを使って、商品を売るという手法です。例えば、『ねこあつめ』というアプリケーションは、自分で名前をつけて可愛がっている猫が広告を持ってくるという仕組みがあります。」
―キャラクターが広告を持ってくるなんて、新しい方法ですね!
「愛着のあるキャラクターが広告を持って来たら、ついついクリックしてしまいますよね。これからのマーケティングは、顧客とより親身な関係を築くことが重要な鍵になってきます。キャラクターが顧客との関係をつなぐ架け橋になっていくのかもしれませんね。」